ここでは脳卒中の方への理学療法の概略を説明しています。一般の方にもわかりやすく書いたつもりですが、わかりにくい点は遠慮なくお尋ねください。
なお実際の治療は、個々の患者さんによって異なりますので、具体的な内容については担当の医師、または理学療法士にお尋ねください。
脳卒中の理学療法を、以下のような段階に分けて行われています。
理学療法士は発症直後の急性期から社会復帰に至るまで、様々な場面で患者さんの生活の質(Quality Of Life)の向上をめざして援助しています。
脳卒中とは、脳内の血管が破れて出血する脳出血、脳の外側で出血するくも膜下出血、脳の血管が詰まる脳梗塞、など急激に発症する脳血管障害をいいます。
脳の血管が障害され血流が途絶える為に、その血管から栄養と酸素を供給されていた脳細胞が破壊されて、その損傷部位や大きさによって様々な症状を呈してきます。
症状で代表的なのが、片麻痺で左右どちらかの半身の運動麻痺や感覚障害をおこします。他に言語障害や認知障害などの症状が起こります。
最近では、救急救命医療の発達により脳卒中による死亡者数は減っているものの、重度な後遺症を持つ患者はむしろ増えているのが現状です。
脳卒中が発症したら、ベッド上から理学療法が出来るだけ早期に病室の開始されます。
理学療法士は、医師や看護婦などと連携をとりながら、関節が固まったり、床ずれがおきるなどの合併症(二次的障害)を予防するために、麻痺した手足を他動的に動かしたり、良い姿勢を保ったりします。
また、健常な部分の筋力低下を防ぐ為の運動をしたり、全身の状態をみながら徐々に体を起こし、座る訓練も開始します。
寝たきりを防いだり、後遺症を少なくするためにはこれらの、早期からの理学療法が大変重要です。
病状が安定してくると、訓練室での積極的な訓練が開始されます。
手足の麻痺の回復を促すためにさまざまな手段を用いて運動機能の再学習を行います。
種々の神経・生理学的理論に基づいた治療が展開されます。
寝返る、起き上がる、座る、立つ、歩くといった基本的な動作を再獲得する為の訓練を、それぞれの患者の状態に合わせて行います。
移動、食事、排泄、更衣、入浴などの日常生活に必要な各動作の自立をはかる訓練を行います。
必要に応じて装具、杖、車椅子などの適応を検討し、使用方法の指導も行います。
脳卒中では多くの場合、何らかの後遺障害が残ってしまいます。そのような場合でも、家庭に戻る際、より動きやすく、安全で快適な日常生活できるような工夫が必要となります。
理学療法士は、御本人の障害の程度や介護者の状況・住環境に合ったより効果的な家屋改造や、ベッドや手摺り、ポータブルトイレなど福祉用品の配置、またそれらの実際の使用方法や介護方法について適切なアドバイスを行います。
家庭復帰した脳卒中後遺症者に対し家庭での生活方法や訓練方法を指導し、身体機能の維持を図ります。また、地域との交流や趣味活動を促し、生活の質(Quality Of Life)の向上を図ります。
理学療法士は、市町村が行う機能訓練事業やリハビリ教室、介護保険導入による在宅介護サービスなどでも積極的に関わり、訓練や指導などを行っています。